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札幌高等裁判所 平成9年(行コ)3号 判決

控訴人(被告) 北海道知事

被控訴人(原告) 有限会社愛康産業

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二事案の概要

当審における主張を次のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」第二に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決四頁二行目の「別紙物件目録記載の土地に」を「川原義信所有の原判決別紙物件目録記載の土地に、安定五品目(建設廃材、ガラス屑、金属屑、陶器屑、プラスチック類)を処理する」に、同五頁三行目の「二」を「三」にそれぞれ改める。)。

一  控訴人

1  法一五条の許可の性質について

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」又は「法」という。)一五条に係る許可については、次の理由から、申請に係る産業廃棄物処理施設が同条二項各号に適合している場合であっても、都道府県知事(以下「知事」という。)には不許可とする裁量が認められる場合があるものと解すべきである。なお、許可の性質は、その時代背景を前提とし、法の趣旨目的を合目的的に解釈して決すべきであり、法の欠缺がある場合でも、可能な限り解釈によって補うべきである。行政処分につき、覊束裁量といい自由裁量といっても、両者に本質的な相異があるものではなく、要は裁量の許される範囲について広狭の差があるにすぎず、程度の問題である。本件においても、裁量の程度については、許可制として法律が規制を設けた趣旨や対象となる権利の性質、法文の規定等を総合的に考慮して解釈すべきである。

(一)(1) 法一五条の許可制度によって規制される権利は財産権であり、社会的公平と調和の見地からされる積極目的規制にも服するものである。同条に係る許可規制は、土地利用の権利を規制するものであるが、土地を産業廃棄物処理施設として利用してはならないというにすぎず、制限の態様も極めて限られたものであるから、効果裁量の余地を排除し得るものではない。

(2) 法一五条に係る許可制は、廃棄物処理施設の設置という土地利用の規制であるから、土地基本法(二条、三条、六条)に基づく土地利用の考慮事項として、その所在する地域の自然的、社会的条件等に応じた適正な利用を図るための許可権者の裁量が認められるべきである。

(3) 環境基本法(一九条、三六条、八条)の環境配慮義務等の規定を基本として、法体系全体の見地から、個別法の解釈においても、環境配慮が求められているものということができるので、いわゆる環境法に属する廃棄物処理法上の許可においても、法律上の要件の有無にかかわらず、環境配慮としての裁量は認められるべきである。また、環境基本法八条の事業者の責務の規定の趣旨によれば、廃棄物処理法一五条による産業廃棄物処理施設の設置許可申請に対する知事の環境配慮として、申請者の申請に至るまでの行為と事業者としての責務を処分に係る考慮事項とすることには理由があるといえる。

(二)(1) 産業廃棄物処理施設は、いわゆる迷惑施設であり、その設置に当たっては、設置者と地域住民との利害の調整を図ることが必要となる。

(2) 廃棄物処理法一条は、「生活環境の保全」及び「公衆衛生の向上」を図ることを同法の目的として掲げている。法一五条二項の技術上の基準等は、「公衆衛生の向上」を図るべく全国一律に最低限守られるべきものとして定められている一方、法のもう一つの目的である「生活環境の保全」は、同項の基準等を満たすのみでは必ずしも達成することができない場合があり、同条三項の規定に従って、許可に生活環境上必要な条件を付することによっても達成し得ない場合がある。

(3) 法一五条は、条件を付することによっては法の目的を達し得ない場合の知事の裁量について具体的な規定をしていないが、同条二項の規定は、「知事は、前項の許可の申請に係る産業廃棄物処理施設が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。」とするのみで、条文の文理解釈においては、要件に適合すると認められるときは許可しなければならないのであって、他に効果裁量の余地はないと解し得るものとはいえない。むしろ、同条三項において、少なくとも許可処分に当たっては、「生活環境の保全」の観点から、知事に対して、どのような条件を付するかという合理的な範囲内での広範な裁量を認めていると解することができるのであり、かかる法律の規定の仕方においては、当然には許可権者としての知事の効果裁量を否定し得るものではない。

(4) 都道府県は、その事務として、住民の安全及び健康を保持し(地方自治法二条三項一号)、公害の防止その他の環境の整備保全を図る(同項七号)べき責務を有しており、本件許可に係る事務を知事に機関委任した理由は、この点にもある。そして、知事は、機関委任事務について、「自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う」(地方自治法一三八条の二)ものとされているのである。

(三)(1) 廃棄物処理法は、平成三年一〇月五日の改正(以下「平成三年改正」という。)により、産業廃棄物処理施設の設置については、届出制から許可制になった。知事は、改正の前後を通じて、施設の構造のみならず、立地条件等について業者を指導すべきものとされていた。すなわち、届出制であったときも「届出制が採用された趣旨は、工事着工前に知事に設置の届出を行い、施設の構造、立地条件、維持管理の体制等について指導を受けるべきことを定めたものである。」とされていたのであり、許可制に改正されたのは、平成二年一二月一〇日付け生活環境審議会の「廃棄物処理施設の設置についての規制は、現行は届出制であるが、施設が地域社会に調和することが求められていることから、技術的な面のみならず、周辺環境の整備についての配慮、跡地利用の計画、地元市町村の意見などを踏まえた総合的な判断を行うため、これを許可制に改めることを検討すべきである。」との答申を受けたためである。

(2) 平成九年法律第八五号による廃棄物処理法の改正(以下「平成九年改正」という。)に当たっては、「産業廃棄物の最終処分場の確保の困難化、廃棄物の処理に対する住民の不安の高まり、不法投棄の件数の増加等の廃棄物の処理をめぐる状況にかんがみ、廃棄物の適正な処理を確保するため」、「廃棄物処理施設の設置の許可の要件及び手続の明確化」等の措置を講ずることとされ、廃棄物処理施設の設置に関する計画及び維持管理に関する計画が、周辺地域の生活環境の保全について適正な配慮がされたものであることを許可の要件とするなど、施設の設置手続の明確化、透明化が図られている。右の改正においては、法の趣旨目的についての改正はなく、従来、法律における許可や指導等について明確さを欠いた部分の明確化(明文化)が図られたものといえる。このことは、右改正前の廃棄物処理法において、処理施設の設置許可における「周辺地域の生活環境の保全について適正な配慮」が、要件として明確化されないで、裁量として存在していることを意味していることにほかならない。したがって、法の趣旨目的に沿って、地域の事情に応じた総合的な判断をすべき知事の裁量が認められるべきである。

(四) 法七条及び一四条の許可(以下「業の許可」という。)と法一五条の許可とは、次のとおり本質的に異なるものであるから、条文の規定が同一の表現であることのみをもって、右両者を同様に解釈すべきではない。

(1) 業の許可は、廃棄物の収集・運搬と処分についての許可であり、申請者が処理業者としてふさわしい処理能力を有するかどうか、また、廃棄物を処分する適切な処理施設を有しているかどうかだけが許可の基準とされ、これを遵守させれば法規制の目的を達成することができ、施設自体が周辺環境に支障を及ぼさずに適正処理できるかどうかなどの総合的な判断は、必要がないのである。

一方、施設設置の許可は、廃プラスチック類処理施設、産業廃棄物の最終処分場その他の処理施設で政令で定めるもの、即ち、一定規模以上の産業廃棄物を処理する特定の施設を規制対象としている。これは、一定規模以上の産業廃棄物の最終処分場などの特定の施設は、生活環境に重大な負荷を与えること及び一旦施設が完成してからでは原状回復に時間を要する場合が多いことから、それを設置する場合には、設置者が排出事業者か処理業者かの如何を問わず、生活環境保全上の支障がないことを確認する必要があることによる。法に定める技術的な基準だけではなく、立地環境など総合的な判断をしなければ、廃棄物処理法の目的である生活環境の保全や公衆衛生の向上を図ること(一条)ができないからである。

(2) 業の許可を得た廃棄物処理業については、その後、施設の規模、能力、設置場所を変更し、又は施設を増設し、若しくは廃止しても事後の届出のみで足り、何の審査も要しないこととされているが、施設設置の許可を得た施設の場合には、施設の構造規模の変更許可を要する場合がある。右の相違があることからも、業の許可と施設設置の許可の性質が異なることは明らかである。

(五) 法一一条は、「知事は、当該都道府県の区域内の産業廃棄物の処理に関する計画を定めなければならない。」と規定し、産業廃棄物処理計画には、産業廃棄物の発生量及び処理量の見込みのほか、産業廃棄物の処理施設の設置に関する事項等を定めるものとしている。この計画は、当該都道府県の区域内における産業廃棄物の適正な処理が行われるように必要な措置を講ずる上で基本となるものである。右の規定を受けて、北海道では平成四年三月に「北海道産業廃棄物処理計画」を策定し、この計画に基づいて計画的、長期的な産業廃棄物対策を推進している。産業廃棄物処理施設の設置許可に当たって、廃棄物処理法に基づいて定めることを義務づけている産業廃棄物処理計画の事項が考慮されることは、当然に法が予定しているものというべきであり、この場合の裁量は、法一五条二項の要件に限るものとはいいきれないから、知事には当該計画の事項を考慮する上で必要な裁量が認められているものと解すべきである。

2  行政指導の不遵守と不許可処分の可否について

被控訴人の行政指導に対する対応は、次のとおりであり、権利の濫用と目すべき特段の事情があるというべきである。

(一) 菊池昭雄(以下「菊池」という。)及び有限会社カトウ設計測量代表取締役加藤一夫(以下「加藤」という。)の両名は、初めて釧路保健所を訪れた際、保健所職員から平成四年九月一一日付け北海道保健環境部長通知「産業廃棄物の処理に係る指導指針」(乙一の1)及び同日付け同部衛生施設課長通知である運用通知(乙一の2)(以下、これらを総称して「指導指針」という。)の交付を受けた。指導指針には、五〇〇メートル以内の周辺住民の同意を取得することのほかに、立地に配慮すべき事項として、住宅地、文教施設、医療福祉施設などから概ね五〇〇メートル以上離れたところを選定しなければならないことが記載されている。また、加藤は、ほとんどの都道府県において、指導要綱によって付近住民の同意が必要とされていることを承知していた。

しかし、被控訴人代表者、役員北村幸雄、菊池及び加藤の四名は、事前協議書を用意して、平成六年四月一八日、再度、釧路保健所を訪れた際、職員に対し、「指導指針は、法律ではないので守る必要はない。裁判になったら行政が負けるのは知っているでしょう。」などと抗議した。住宅地、文教施設等に隣接している場所を埋立処分場として予定したことは、本件の計画を検討した時点で明らかであり、同日の釧路保健所における言動を考えると、指導指針に従う意思がなかったことは、明白である。

(二) 被控訴人は、本件処理施設から概ね五〇〇メートル以内の住民の同意を得ることに関して、平成七年二月一九日に住民説明会を一回開催したのみであり、その内容は、住民からの質問に対しては企業秘密を理由に答えないなど、終始、形式的、高圧的で不誠実な態度での説明であり、住民の反感を強めるものであった。

(三) 被控訴人が住民の同意を得るために交渉した相手方は、常丸釧路市議のみであり、本件処理施設から五〇〇メートル以内にある二つの連合町内会(武佐四丁目連合町内会、春採下町連合町内会)の個々の世帯を回る努力をしなかった。被控訴人は、住民の同意に関して、真摯に行政指導に対応したということはできない。

(四) 被控訴人は、活動実体のない役員のみの会社であり、釧路市においては、本件産業廃棄物処理施設の設計を担当した加藤に専ら行政側との対応を任せており、被控訴人自体は何ら行政指導に関知していない。

(五) 被控訴人が示す事業計画では、一〇年間において、約一二万立方メートルの建設廃材、ガラス、陶磁器屑及び廃プラスチック類の埋立を行うこととしている。しかし、被控訴人がどこから廃棄物を搬入する計画なのか不明であり、事業計画に必要な情報収集、調査を行った形跡はない。被控訴人は、釧路市周辺地域からも廃棄物を搬入すると思われるが、当該地域では安定型処分場が不足している状況にはない。

(六) 被控訴人は、釧路保健所、北海道保健環境部環境室環境整備課(当時は衛生施設課)、釧路市及び処分場周辺予定地の町内会長等との協議などを自ら行わず、主に被控訴人の社員ではない菊池及び加藤に行わせ、責任ある事業者として関係行政機関や関係者と協議を行っていない。このような会社に事業者としての適正な廃棄物処理を期待することは難しい。

3  本件不許可処分の適法性について

本件設置場所は、都市計画法七条に規定する市街化調整区域内にあるが、第一種及び第二種の住居専用地域に隣接しており、また、周辺五〇〇メートル以内には、高等学校、老人福祉センター、保育所など複数の文教・福祉施設が設置されている。このような場所に産業廃棄物処理施設を設置すれば、建設用重機の使用や廃棄物運搬車両の通行に伴い、周辺住民の生活環境や生徒の学習環境などに大きな影響を及ぼすことは必至であり、本件設置場所が産業廃棄物処理施設の設置場所として著しく不適当な場所であることは明らかである。

控訴人は、右の事情を考慮して、廃棄物処理法一五条により知事に認められた合理的な裁量の範囲内で本件不許可処分を行ったのであり、本件不許可処分は適法である。

二  被控訴人

知事が、法一五条一項の許可をしないことができるのは、許可申請にかかる産業廃棄物処理施設が同条二項各号に適合していない場合のみである。控訴人は、本件処理施設が同条二項各号に適合しているにもかかわらず、本件不許可処分をしたものであるから、本件不許可処分は違法である。

控訴人の行政指導に対する被控訴人の対応には権利の濫用と目すべき事情は存在しない。

第三証拠関係〈省略〉

第四当裁判所の判断

当裁判所も、被控訴人の本訴請求は理由があるので認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」第三に説示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決の訂正

1  原判決一八頁一行目の「甲」の次に「一、」を、同行の「一七、」の次に「二〇ないし二三、二八、」を、同行の末尾に続けて「一二の1ないし14、」をそれぞれ加える。

2  同一九頁二行目の次に行を改めて「菊池及び加藤の両名は、初めて釧路保健所を訪れた際、保健所職員から指導指針の交付を受け、その内容を了知した。また、加藤は、ほとんどの都道府県において指導要綱によって付近住民の同意が必要であることを承知していた。」を加え、三行目の「四月に」を「四月、北村、菊池及び加藤とともに」に改め、同六行目の「受けた」の次に「が、これに不満を持ち、抗議した」を加える。

3  同二一頁五行目の「おいても、」の次に「出席した住民がほとんど施設設置に反対の意向であったこともあって、」を加える。

4  同二二頁一〇行目の「なく」の次に「(甲一七、弁論の全趣旨)」を加える。

二  当審における主張に対する判断

1  法一五条の許可の性質について

(一) 廃棄物処理法は、平成三年改正により、産業廃棄物処理施設の設置について、従来の届出制から許可制に改めるとともに、使用開始前における知事の検査を受けることを義務づけた。すなわち、法一五条一項は、産業廃棄物処理施設においては、産業廃棄物の中間処理、最終処分が行われるので、施設の構造上の安全性・維持管理の確実性等が確保されていなければ、産業廃棄物が安定化・無害化されず、また、施設そのものが生活環境保全上の支障を生じさせるおそれがあるとの観点から、許可制を定め、同条二項は許可の要件を、同条三項は、同条一項の許可には生活環境の保全上必要な条件を付することができることを、同条四項は、許可を受けた者は、知事が行う検査を受け、同条二項一号所定の技術上の基準に適合しなければ、これを使用してはならないことを、同条五項は、許可を受けた者は、厚生省令で定める技術上の基準に従い、産業廃棄物処理施設の維持管理をしなければならないことをそれぞれ規定している。右規定の内容からすれば、法一五条の許可制は、産業廃棄物処理施設の設置を一般的に禁止した上で、同条二項各号に適合していると認められる場合に、個別的に右の禁止を解除するという規制方式であり、財産権(土地利用権)を公共の福祉の観点から制限しようとするものであると解される。

ところで、憲法二九条は、財産権の不可侵を宣言した上、財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、「法律でこれを定める」(同条二項)べきものとしているので、公共の福祉の観点から、財産権の内容の制限すなわち財産権の行使の制限をするためには、法律によることが必要とされる。廃棄物処理法一五条は、本来は自由であるはずの私権(財産権)の行使を公共の福祉の観点から制限するものであるから、同条の解釈にあっては、その文理及びその他の関連規定を総合的に判断して、当該申請に係る産業廃棄物処理施設が法律に定める要件すなわち同条二項各号所定の要件に適合する場合においても、なお知事に対して、許可を与えるか否かについての裁量権(以下、単に「裁量権」又は「裁量」というときは、右の意味における「裁量権」又は「裁量」をいう。)を与えているものと解されるときでない限り、必ず許可しなければならないものとしていると解するのが相当である。法の定めた要件が満たされたと認められる場合にも、その旨の規定がないにもかかわらず、許可を拒むことができるというのでは、法律による委任がないにもかかわらず、知事が私権(財産権)の行使を制限することを認めるのと同様の結果を認めることになり、憲法の前記規定の趣旨に照らして相当でないからである。そして、法一五条については、その文理及びその他の関連規定を総合的に判断しても、知事に対して裁量権を与えたものと解することはできないので、知事には、裁量権はないものといわなければならない。

もっとも、当該処理施設を設置し又は操業することにより、付近住民の人格権、所有権等を侵害する場合には、別途、当該施設の設置又は操業の差止めを請求することが考えられるし、廃棄物処理法が予想していなかったような重大な被害が付近住民に及ぶことが明白であるような場合には、緊急避難等の法理を借用するなどして、当該申請自体を不許可とする余地も考えられないではないであろう。しかしながら、本件において控訴人が主張するような事態は、廃棄物処理法の制定に当たり当然予想できた事柄であるにもかかわらず、同法は前記のような規定をしたに止まるのであるから、未だ右のような法理を借用して、本件許可申請を却下することのできる場合には当たらないと解するのが相当である。

(二) 控訴人は、許可の性質は、その時代背景を前提とし、法の趣旨目的を合目的的に解釈して決すべきであり、法の欠缺がある場合でも、可能な限り解釈によって補うべきであること、及び行政処分につき、覊束裁量といい自由裁量といっても、両者に本質的な相異があるものではなく、要は裁量の許される範囲について広狭の差があるにすぎず、程度の問題であることを前提とした上、知事に裁量権が与えられている理由として、種々の根拠を挙げている。

まず、控訴人が前提として主張する点について考える。〈1〉 法の欠缺がある場合でも、可能な限り解釈によって補うべきであることは、控訴人主張のとおりであるとしても、本件においては、法の欠缺がある場合ではなく、廃棄物処理法の規定によれば許可しなければならないとしているものと解されるが、許可した場合に付近住民等に悪影響を及ぼすと考えられるときに、控訴人が、右のような規定があるにもかかわらず、なお不許可とすることが許されるかどうかが問題とされているのであるから、控訴人の右主張は、本件とは局面を異にする議論というべきである。〈2〉 また、覊束裁量、自由裁量の問題が、裁量の広狭、程度の問題に帰着するとしても、右の広狭、程度には、その一場合として、裁量権が与えられていないか、又は裁量の幅が極めて限定されており、与えられていないに等しい場合をも含むものと解すべきであるから、覊束裁量、自由裁量の問題について、控訴人の主張するように考えるとしても、このことから当然に、本件において、控訴人が不許可処分をすることが許されているとすることにはならない。そして、控訴人が挙げるその余の根拠は、いずれも、前記(一)の判断を左右するには足りないというべきである。

なお、若干の点について付言する。

(1)〈1〉 控訴人は、財産権は社会的公平と調和の見地からされる積極目的規制にも服するものであるところ、法一五条の許可制は、土地を産業廃棄物処理施設として利用してはならないというにすぎず、制限の態様においても極めて限られたものであることから、効果裁量の余地を排除し得るものではない旨主張する。

しかしながら、財産権に対する制限は法律によってしなければならないことは、既に説示したとおりであるから、規制の対象が財産権であるからといって、規制する法律の規定内容いかんにかかわらず、効果裁量の余地を排除し得るものではないとすることはできない。そして、法一五条の趣旨は、既に説示したとおりのものであると解されるのである。

〈2〉 控訴人は、a 法一五条の許可制は、廃棄物処理施設の設置という土地利用の規制であるから、土地基本法(二条、三条、六条)に基づく土地利用の考慮事項として、その所在する地域の自然的、社会的条件等に応じた適正な利用を図るための許可権者の裁量が認められるべきである旨、b いわゆる環境法に属する廃棄物処理法上の許可においても、環境基本法(一九条、三六条、八条)の環境配慮義務等の規定に基づく環境配慮が求められているということができるので、法律上の要件の有無にかかわらず、環境配慮としての裁量は認められるべきである旨、c 環境基本法八条の事業者の責務の規定の趣旨によれば、廃棄物処理法一五条による産業廃棄物処理施設の設置許可申請に対する知事の環境配慮として、申請者の申請に至るまでの行為と事業者としての責務を処分に係る考慮事項とすることには理由がある旨主張する。

しかしながら、右の各法律は、個別の具体的な法規制や法的措置を定めるというよりも、むしろ国政に重要なウエイトを占める分野について、制度、政策に関する基本方針を明示することにより、基本的政策の方向を示すことを主な内容とするものであって、控訴人の指摘する規定を根拠として、廃棄物処理法一五条の許可に関して、知事に裁量権があるものと解することはできない。なお、本件処理施設の設置が、廃棄物処理法以外の法令に抵触するため、他の法令によって許されない場合には、当該法令の手続に従って不許可処分がされるべきであって、廃棄物処理法一五条による不許可処分をすることは許されないというべきである。

(2) 控訴人は、廃棄物処理法が生活環境の保全を図ることを目的としているのに、法一五条三項により条件を付するだけでは、右の目的を達成し難い場合があること、地方自治法が地方公共団体の行うべき事務として、住民の安全、健康及び福祉を保持し、環境を整備保全する事務及び環境を保全する事務を挙げていること等を根拠に、国の機関委任事務とされた法一五条の知事の許可については、知事に裁量権がある旨主張する。

しかし、法一条や地方自治法の各規定は、法の目的とする一般的な理念や地方公共団体が担当すべき事務の範囲等を定めているものであるから、これらの規定があるからといって、法一五条の許可について、知事に裁量権が与えられているということはできない。また、同条二項の許可要件の規定が不十分であり、同条三項により条件を付しても、なお十分に法一条の目的を達成することが困難な場合があることが予想され、後に説示するように、平成九年改正は、この点を改めたものであるが、そうであるからといって、法改正を待たずに知事に裁量権が与えられていたものと解することは困難である。

(3) 控訴人は、法改正の経緯から、地域の事情に応じた総合的な判断をすべき知事の裁量が認められるべきである旨主張する。

〈1〉 証拠(乙一三)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人の主張するとおり、平成三年改正の前後を通じて、届出制及び許可制のいずれの場合においても、知事が業者に対して産業廃棄物処理施設の構造のみならず立地条件等についても指導すべきことと解されていることが認められるが、右の指導は、行政指導に止まるものであって、法的な強制力があるものではなく、また、その違反に対する法的効果が定められているものでない。また、証拠(乙一四)によれば、控訴人の主張するとおり、平成三年改正の際の生活環境審議会の答申がなされたことが認められるが、右改正後の法一五条に「周辺環境の整備についての配慮」に関連する許可要件が定められたわけではないので、右答申の存在をもって、知事の裁量権を根拠付けることはできない。

〈2〉 証拠(乙一五の1、2)及び弁論の全趣旨によれば、平成九年改正による法一五条関係の改正の趣旨は、一般廃棄物及び産業廃棄物を適正に処理するための処理施設について、住民の不安や不信感の高まりを背景として、処理施設設置等をめぐり地域紛争が多発し、深刻な状況になっていることから、廃棄物処理施設の設置の許可手続を明確化し、許可の要件の見直しを行うことにより、周辺地域の生活環境の保全について適正な配慮がなされた施設の設置を進めていくことにあること、改正の要点は、a 産業廃棄物処理施設の設置の許可の申請者は、当該施設の設置に関する計画及び維持管理に関する計画等をその申請書に記載するとともに、当該申請書に当該施設の設置が周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査結果を記載した書類を添付するものとすること(同条二項、三項関係)、b 知事は、政令で定める産業廃棄物処理施設について設置の許可の申請があった場合には、当該施設の設置の場所等を告示するとともに、申請書等を一月間公衆の縦覧に供するものとすること(同条四項関係)、c 知事は、右の告示をしたときは、関係市町村の生活環境の保全上の見地からの意見を聴かなければならないものとするとともに、当該施設の設置に関し利害関係を有する者は、縦覧期間満了後二週間以内に生活環境の保全上の見地からの意見書を提出することができるものとすること(同条五項、六項関係)、d 産業廃棄物処理施設の設置に関する計画及び維持管理に関する計画が周辺地域の生活環境の保全について適正な配慮がなされたものであることを許可の要件とすること(一五条の二第一項関係)、e 知事は、政令で定める産業廃棄物処理施設の設置の許可をする場合においては、あらかじめ当該施設の設置に関する計画及び維持管理に関する計画が周辺地域の生活環境の保全に適正な配慮がなされたものであるかについて、生活環境の保全に関し厚生省令で定める事項について専門的知識を有する者の意見を聴かなければならないものとすること(同条二項関係)、f 知事は、産業廃棄物処理施設の構造又は維持管理が技術上の基準又は申請書に記載された設置に関する計画若しくは維持管理に関する計画に適合していないと認めるとき、又は許可を受けた者が当該許可に付した条件に違反したときは、許可の取消等ができるものとすること(一五条の三関係)等であることが認められる。右の事実によれば、平成九年改正は、周辺地域の環境保全の見地から、現行法の許可の要件を見直し、これを厳しくしたものであって、現行法に定められている要件を明確化したにすぎないものであることは明らかであるから、右改正を根拠として、改正前の法一五条を控訴人の主張するように解釈すべきものということはできない。

(4) 控訴人は、業の許可と施設設置の許可とは、その性質が異なるものであり、条文の規定が同一の表現であることのみをもって、両者を同様に解釈すべきではない旨主張する。

しかしながら、業の許可と施設設置の許可とはその対象を異にするものではあるが、許可の要件を満たした場合に、なお許可権者に対して、許可すべきか否かの裁量権が与えられているかという観点からは、その文理及びその他の関連規定を総合的に判断しても、両者の間に異なるところはないというべきである。

(5) 控訴人は、北海道では、法一一条に基づいて、「北海道産業廃棄物処理計画」を策定し、計画的、長期的な産業廃棄物対策を推進しているところ、産業廃棄物処理施設の設置許可に当たって、産業廃棄物処理計画の事項が考慮されることは、当然に法が予定しているものというべきであるから、知事には、右計画の事項を考慮する上で必要な裁量が認められていると解すべきである旨主張する。

法一一条は、産業廃棄物処理施設の設置の許可、処理業の許可等を通じて当該都道府県の区域内の産業廃棄物の処理の監督を行う立場にある知事は、右区域内の産業廃棄物について、処理計画を定めるべきものとしたものであり、右処理計画は、当該都道府県の区域内における産業廃棄物の適正な処理が行われるように必要な措置を講ずる上で基本となるものである。そして、証拠(乙一六)によれば、北海道は、控訴人の主張するとおり廃棄物処理計画を策定しているところ、右計画中には、産業廃棄物の処理施設の設置に関して、設置者が十分な事前調査と検討をすること、周辺地域の生活環境の保全、増進、災害防止及び跡地利用に配慮すること、地元市町村及び周辺地域住民の理解と協力を得て設置すべきことなどが定められていることが認められる。しかし、法一一条にいう「産業廃棄物の処理に関する計画」は、当該都道府県の区域内における産業廃棄物の適正な処理が行われるように必要な措置を講ずる上で基本となるものではあるが、法一五条の許可に際しての基準とされているわけではないから、右計画の存在が控訴人の施設設置の許可についての裁量権を根拠付けるものということはできない。

2  行政指導の不遵守と本件不許可処分の可否について

控訴人は、被控訴人の控訴人による行政指導への対応には、権利の濫用と目されるような特段の事情が存する旨主張する。

(一) 普通地方公共団体は、地方公共の秩序を維持し、住民の安全、健康及び福祉を保持すること並びに公害の防止その他の環境の整備保全に関する事項を処理することをその責務の一つとしているのであり(地方自治法二条三項一号、七号)、また、廃棄物処理法一条は、「生活環境の保全」及び「公衆衛生の向上」を図ることをその目的として掲げているのであるから、これらの規定の趣旨目的に照らせば、関係地方公共団体において、当該産業廃棄物処理施設設置許可申請が許可されて、申請どおりに設置されると、付近住民に対して、少なからず生活環境上又は公衆衛生上の被害を及ぼすことが予想される場合には、当該地域の生活環境、公衆衛生の維持・向上を図るため、申請者に対して、当該設置計画につき、一定の譲歩・協力を求める行政指導を行うことも許されるものというべきである。しかしながら、行政指導は、本来相手方の任意の協力を前提とするものであって、強制力を有するものではないことは当然のことであるから、申請者が右行政指導には応じられないとの意思を表明している場合には、当該申請者が受ける不利益と右行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、右行政指導に対する不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存しない限り、申請者が当該申請を維持することが権利の濫用に当たるものとすることはできないというべきである(最高裁昭和六〇年七月一六日第三小法廷判決・民集三九巻五号九八九頁、最高裁平成五年四月二三日第二小法廷判決・裁判集民事一六九号三七頁参照)。

(二) 引用した原判決が「事実及び理由」第三の二2において認定した本件処理施設の設置場所の周辺地域の状況、すなわち、〈1〉 本件処理施設の設置場所は、原判決別紙「本件位置図」のとおりであり、都市計画法の第一種及び第二種の住居専用地域に近接し、周辺五〇〇メートル以内には、約一二〇〇戸の住宅があり、約三〇〇〇人の住民が居住しており、右設置場所の境界線と最も近い民家までの距離は約一〇・五メートルであること、〈2〉 本件処理施設の設置場所の周辺五〇〇メートル以内には、釧路星園高等学校、湖畔小学校、武佐児童館、武佐老人福祉センター、わかくさ保育園などの文教・福祉施設があり、右設置場所の境界線と釧路星園高等学校の敷地までの距離は最も近い地点で約六六・五メートルであることなどに照らすと、本件処理施設の設置が周辺住民の生活環境や生徒の学習環境に各種の悪影響を及ぼす場合があることが予測されるというべきであるから、産業廃棄物処理施設を設置しようとする被控訴人と住民との利害を調整すべき立場にある控訴人が、指導方針等の定めに従い、本件処理施設の設置許可を求める被控訴人に対し、事前に周辺住民の同意を得、釧路市と公害防止協定を締結するように行政指導したことには、相当な理由があるといわなければならない。

(三) そこで、本件において、前記特段の事情が認められるかどうかについて検討する。

(1) 原判決挙示の関係証拠によれば、引用した原判決の「事実及び理由」第三の三2において認定した事実のほか、次の事実が認められる。

〈1〉 本件設置場所の土地所有者である川原義信は、北海道出身で愛知県春日井市に居住している知人の菊池に、右土地を埋め立てて跡地を牧場として利用したい旨相談したところ、菊池から産業廃棄物処理場として埋め立てることが得策であると助言され、これを受け入れることにし、菊池に協力を要請した。

〈2〉 菊池は、愛知県瀬戸市で不動産の測量、土木設計等を行っていた有限会社カトウ測量設計の代表者である加藤とかねてから知合いであったところ、加藤が廃棄物処理場の設計をした経験を有していたことから、同人に対し、川原が本件設置場所に産業廃棄物処理施設を設置することを検討していると相談した。

〈3〉 加藤は、高校、大学を通じての先輩で土木建設業者である川村康博及び知人である北村幸雄に右の事情を話し、川村と北村は、本件設置場所に産業廃棄物処理施設を設置して廃棄物処理業を営むことを希望し、川村と北村は、平成五年七月五日付けで、財団法人日本産業廃棄物処理振興センターから厚生大臣認定の「産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物処理業に関する新規許可講習会」の産業廃棄物の処分課程を修了した旨の修了証の交付を受け、その後、被控訴人を設立して川村が代表取締役に、北村が取締役に就任し、更に、川村は、平成六年七月一四日付けで、財団法人日本環境衛生センターから廃棄物処理法施行規則一七条所定の厚生大臣認定の廃棄物処理施設技術管理者認定の講習を修了し、産業廃棄物最終処分場技術管理者の資格を取得した旨の修了証の交付を受けた。

〈4〉 加藤は、被控訴人から、本件処理施設の設計を依頼されたほか、北海道及び釧路市などとの折衝を任され、菊池や北村らとともに右折衝を担当してきたが、被控訴人代表者も数回、右折衝や前記の説明会に出席したことがあった。

(2) 控訴人の主張する特段の事情に関する事実についての判断は、次のとおりである。

〈1〉 被控訴人代表者、役員北村幸雄、菊池及び加藤の四名が、平成六年四月一八日、釧路保健所を訪れて指導を受けた際、これに不満を持ち、抗議したことは前記のとおりであるが、本件全証拠によっても、その際、被控訴人代表者らが保健所職員に対し、「指導指針は、法律ではないので守る必要はない。裁判になったら行政が負けるのは知っているでしょう。」などと申し向けた事実を認めることはできない。

〈2〉 被控訴人の開催した平成七年二月一九日の住民説明会における説明内容が不十分なものであり、住民の不安を解消するに足りるものでなかったことは、前記のとおりであるが、出席した住民もまた施設設置に反対の態度が固かったのであるから(証人加藤一夫)、実質的な話合いができなかった責任を被控訴人のみに負わせることは相当でない。

〈3〉 被控訴人が住民同意を得るために交渉した相手方は、常丸釧路市議のみであり、本件処理施設から五〇〇メートル以内にある二つの連合町内会(武佐四丁目連合町内会、春採下町連合町内会)の個々の世帯をまわる努力をしなかったのであって、被控訴人は、住民同意に関して真摯に行政指導に対応したということはできないが、既に認定したところによれば、本件処理施設から概ね五〇〇メートル以内の住民数約三〇〇〇名の殆ど全員がその設置に反対の意見であり、しかも平成六年一二月には、周辺住民の大多数を含む約三万二〇〇〇名の本件処理施設反対の署名簿が提出されている状況にあったのであるから、被控訴人の右のような対応も、やむを得ない面があったということができる。

〈4〉 被控訴人の設立経過、北海道などとの折衝経過等は前記のとおりであり、本件全証拠によっても、未だ被控訴人が形骸化した会社であって、事業者として適正な廃棄物処理を期待することは難しいとの事実を認めることはできない。

〈5〉 証拠(甲一、証人加藤一夫)によれば、被控訴人は、事業計画において、一〇年間に約一二万立方メートルの建設廃材、ガラス、陶磁器屑及び廃プラスチック類の埋立を行うこととしていること、及び被控訴人は、釧路市及びその周辺地域から廃棄物を搬入する予定であることが認められる。証人山田和弘は、当該地域では安定型処分場が不足している状況にはないとの控訴人の主張に沿う供述をしているが、これを裏付ける的確な証拠はなく、未だ前記の認定を覆すことはできない。

(3) 以上の事情を総合すると、被控訴人の行政指導に対する対応には不十分な面があったということはできるとしても、被控訴人が右のような対応をしたことには、ある程度やむを得ない面があったことは否定し難いところである上、被控訴人は、本来、その自由意思によって行政指導に従うか否かを決することのできる立場にあるのであるから、被控訴人が、控訴人の行政指導に従わないまま本件許可申請をしたとしても、やむを得ないものというべきであり、未だ権利の濫用と目されるような特段の事情があるものとすることはできないというべきである。

なお、控訴人は、被控訴人が指導指針に記載されている立地について配慮すべき事項を遵守すること等の行政指導に誠実に従う意思がなかった旨主張する。しかし、行政は法律を執行することがその本来の任務であるところ、廃棄物処理法の規定上は、本件許可申請を不許可とすべき根拠がなく、また、行政指導は、前記のように、あくまでも相手方の任意の協力を前提とするものであるから、仮に控訴人の主張するような事実があったとしても、前記の判断を左右するものではないというべきである。

したがって、控訴人の前記主張は、採用することができない。

三  結論

以上検討したところによれば、控訴人は、被控訴人の本件許可申請が法一五条所定の要件を充足していたのに、本件不許可処分をしたものというべきであるから、本件不許可処分は違法であるというべきである。

よって、本訴請求を認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 瀬戸正義 小野博道 土屋靖之)

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